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高松高等裁判所 昭和34年(く)15号 決定

少年 Y(昭一六・二・二二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は記録に綴つてある附添人阿部喜一作成の抗告申立書に記載のとおりであるからここにこれを引用する。

論旨は少年の本件非行は思慮浅薄に基く程度を越した悪戯である、従来非行もなく今後再犯の虞もない、被害者とは示談も成立して慰藉料の支払をしたので被害者も少年に寛大な処分を希望して居る、従つて原決定は不当であるから取消されたいというのである。しかし記録を精査するに、少年は既に○○高等学校二年生の頃から不良グループと交友し益々その度を深行して勉学に励まず徒遊盛場徘徊等の行動を続け、高校卒業前の昭和三四年二月二六日級友Aと共謀の上原決定掲記第二の強姦の所為に出で、更に卒業後の同年七月七日不良交友と共に原決定第一の窃盗の犯行に及んだもので、少年の非行性は相当高度に達して居り論旨がいうように悪戯がその域を越した程度のものとは到底見ることができない。殊に前記強姦の如きは強姦の目的でK子を栗林公園東門附近に誘出した折柄級友Aに出会うや同人にも淫行をさせてやるから後から来いと告げて輪姦の挙に及んだもので、女子の貞操を恰も弊履の如く蹂躪して何等顧るところがないのである。かような少年の非行性及び本件犯行の態様にこの種非行の激増する今日の世相を併せ考えるときは、たとえ少年の父が被害者K子の父Tに金五万円の慰藉料を提供して示談が調い、右Tにおいて少年に寛大な処分を望んで居るものとしても、少年の改過遷善は少年を一定期間国家の矯正施設に収容して根本的に適正な教育を施す必要が痛感せられるのである。従つて原決定の措置は相当であつて原決定には論旨主張のような処分の著しい不当も事実の誤認も又法令の違反もない。

よつて本件抗告は理由がないから少年法第三三条第一項により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 三野盛一 判事 渡辺進 判事 小川豪)

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